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2013年6月25日火曜日

「生活保護改正法」の中止を求める議会請願意見陳述

生活保護問題で山形市議会に請願しました。山形市では今年から請願趣旨を説明する機会を与えてくれることになりましたので、早速説明に行きました。その原稿をアップします。

守岡等

  現行の生活保護法は、生活保護申請は口頭でも可能であるとされており、必要な書類の提出を義務づけていません。改正案は、申請を書面とした上で、資産及び収入、家賃など、保護の要否判定に必要な書類の提出を申請の要件化しています。
 これまでいくつかの福祉事務所で、申請意思を表明しても申請書を渡さず、申請時に必要のない書類の提出を求めて申請権を侵害する「水際作戦」が行われてきましたが、今回の改正はこれを合法化・法制化するものです。
  こうした批判を前に、衆議院では書類を提出できない「特別な事情」がある人は例外扱いする修正が行われましたが、修正したことで書類提出が大原則で書類提出がない場合の申請受理はごく限られたケースにとどめることにお墨付きを与えたのと同然です。政府は「改訂でも運用は変わらない」といっていますが、それならば法改正の必要性はないのではないでしょうか。
 さらに現行法は、扶養義務者による扶養を保護の要件とはしていませんが、改正案は扶養義務者に収入や資産の報告を求めたり、扶養できない場合の説明責任を課すものになっています。
 これらの法改正によって、今以上に要保護者の申請意思を萎縮させることにつながり、貧困を深刻にし、餓死や孤独死を誘発するものです。
  今年の5月に国連の社会権規約委員会が日本政府に対し、生活保護の申請手続きを簡素化し、申請者が尊厳を持って扱われることなどを求める勧告を出したのは、日本の「水際作戦」の人権侵害ぶりがあまりにも明白だったからです。
 国連の社会権規約を批准している日本政府は、勧告に基づき事態を改善する義務がありますが、今回の法改正は勧告に真っ向から逆らうものです。
 いま、山形県内の生活保護率は0.62%(平成24年10月)と東北最低、全国でも下位クラスにあります。村山地区は0.4%台となっています。生活保護が必要な方たちのうち実際に生活保護を受給しているのは20~30%と言われています。全国で400万人以上が生活保護基準以下の生活を強いられています。生活保護行政でいま必要なことは、生活保護申請しやすい環境を整備し、補足率を引き上げることではないでしょうか。
 県社保協に所属する病院でも、がんに冒された患者さんが、なかなか生活保護申請を受理されず、最後の最後になって病院に担ぎ込まれ、MSWや議員の援助で生活保護申請にこぎつけたものの、残念ながら亡くなるという事件がありました。
 また、勇気を振り絞って市役所に相談に行っても、家族や親族の状況を根掘り葉掘り聞かれて、二度と保護申請する気にはならないという声も多数寄せられています。
 全国では年間70人程度が餓死しているという事実が人口動態統計で示されています。
 
 こうした悲劇を繰り返さないためにも、市民の健康で文化的な最低限度の生活を守るためにも、生活保護法改正の中止を求める意見書を提出してくださるよう、お願いします。
 以上で意見陳述を終わります。

2013年6月5日水曜日

山形県内で二度と介護悲劇を生まないために

            「山形県内で二度と介護悲劇を生まないために」
                                             
1.県内の介護事件の概要(2006年~)
(1)件数18(殺人9、心中7、その他2)
(2)地域
鶴岡市6(33.3%) 酒田市2(11.1%) 山形市2 朝日町2  東根・尾花沢・上山・遊佐・真室川1
(3)加害者(心中の場合は首謀者)
   男15(83.3%) 平均年齢59.7歳 独身9(50%)  息子11(61.1%)夫4(22.2%)
(4)被害者
   女16(88.9%) 平均年齢80.5歳 独り身9(50%)
(5)事件のキーワード
①老老介護6(33.3%)  ②認知症8(44.4%)  ③経済苦5(27.8%)

2.考察
①男性(息子・夫)の介護疲れによる母親・妻への加害
②特に50代の独身男性で十分な収入がない場合
③認知症対応は在宅では困難
④介護施設の不足
⑤鶴岡市など庄内地区で50%を占める
・孤立死、孤独死の数も鶴岡・酒田は高い
・新市街(櫛引、温海、平田)で発生→市町村合併で行政単位の拡大による管理の困難さが原因(?)

【2008年4月 山形市岩波の事例の背景】
①病院から出される…平均在院日数のしばり
 ・A病院(292床)看護基準7:1 平均在院日数は19日以内
 ・入院基本料一日1人15,550円が5,750円に下がる→概ね2週間で「転院のお願い」
②簡単に特養に入所できない
 ・当時の県内の特養入所待機者数は1万人以上(重複を除いても7千人)約2年待ち
 ・入所判定基準:家族の介護者がいると判定基準が下がる
 ・軽費老人ホーム:認知症の方は入れない
 ・療養型病床:山形県は全国一少ない病床数
③在宅介護の困難
 ・独身、失業中でこの春から牧場勤務が決まっていたが、母親の介護を考え断った。
 ・収入は母親の年金のみ。居宅介護サービスの利用料負担も厳しい状況だった。
④後期高齢者医療制度の開始でさらなる負担増になることが心労に
 ・実は激変緩和措置の対象だったが、十分な説明がなく不安を募らせた。
⑤家族関係
 ・息子さんは心優しい人だった。母親が「自分がいたのではおまえの負担になる」と口にしていた(近所の人)

【2009年4月 上山市の事例の背景】
①家族関係
 ・60年間周囲も認める仲のよい夫婦だった。
 ・夫が自宅で一人で妻を介護していたが、床ずれも作らない行き届いたものだった。
 ・夫も84歳と高齢で、妻より先に自分が病死するのではと不安を抱くようになった。
 ・長男夫婦、孫と同居していたが、家族にも病気、仕事の事情があった。
②経済状況
 ・介護費用、医療費は夫婦の年金から捻出していたが、年金だけでは足りず、少ない貯金を取り崩しながら生活していた。
  ・施設に入れるには費用が足りない。
 ・4月から介護料金が上がると知ったことを契機に、心中を決意した。
③介護の困難性
 ・寝たきり、認知症の妻を一人で介護していた(福祉施設のデイサービスを利用していた)。
 ・「証人の公判供述からもうかがわれるとおり、いわゆる老老介護や施設が十分にあるとまでは言い難  いところもあるから、被告人が経済的な不安から行政に助けを求める気持ちにならなかったことも理  解できる」(判決文)

【2012年8月 鶴岡市の事例の背景】
①家族関係
 ・2010年に父親が亡くなり、妻と別居して実家でアルコール依存症の母親と同居を開始した。
 ・母親は両足が悪く、移動できないストレス解消と痛みを和らげるために飲酒が習慣化した。
②事件までの流れ
 ・2011年春頃、酔った母親と口論になり、暴力をふるって以来、酔った姿を見るといらだつようになった。
 ・酔って倒れた母親の顔に水をかけたが起きないことに腹を立て、コップで殴るなどした。

3.高齢者指標から
(1)ひとり暮らし高齢者の割合(H24.4.1資料1)
・前年より2018人増加し29755人となっている。
・庄内地区が10.0%で最も高い
 (1小国 2酒田 3長井 4米沢・上山・遊佐 7南陽 8山形 9鶴岡 10西川)
・孤立死・孤独死も鶴岡・酒田が突出している
■「山形県における孤独死の実態」(平成18年 大澤資樹 山形大学医学部教授)
①山形県内で発生した孤独死の集計
年   平成12   平成13   平成14   平成15   平成16   5年間計
件数    157      149        167       182        203      857
②年齢・性別
・平均年齢は65.6歳 65歳以上は55.8%
・男性64.8% 女性35.2%
③死因
・病死79.1% 自殺15.8% その他
④地域差
・鶴岡市と酒田市が高い
・高齢者の一人暮らしが高い地域

(2)寝たきり高齢者の割合(H24.4.1資料2)
・前年より3451人増加し11320人(65歳以上人口の3.5%)となっている。
・村山3.9 庄内3.3
 (1大石田 2山形 3中山 4飯豊 5東根・白鷹・河北 8新庄 9鶴岡 10山辺)

(3)要介護認定状況(H23年12月末資料3)
・65歳以上のうち要介護・要支援の認定を受けたのは18.0%で前年より0.6ポイント増
・庄内地区が19.8で最も高い
 (1遊佐 2鶴岡 3大石田 4鮭川 5酒田 6高畠 7飯豊 8大江・小国 10上山)

(4)地域包括支援センター
・保健福祉圏域別では村山25 最上8 置賜10 庄内16 計59


4.保健福祉圏域別の高齢者を取り巻く状況(平成22年長寿社会課)
庄内地区は一人暮らし高齢者の割合が高く、在宅サービス利用者が多い。

5.自殺者数(保健所別)
 年   村山   最上   置賜   庄内   県合計
平成23    91       35       49       89       264
平成22   119       28       71       89       307
平成21   131       33       76       81       321
6.完全失業率(平成22年度山形県統計協会)
*平成22年10月1日現在の山形県の完全失業者数は34,786人(5年前より3,867人増加)
①4%未満(鮭川、飯豊)
②4~5%(三川、尾花沢、河北、朝日、白鷹、長井、高畠、川西、小国)
③5~6%(遊佐、酒田、庄内、鶴岡、西川、大江、寒河江、最上、東根、上山)
④6%以上(真室川、金山、新庄、戸沢、大蔵、舟形、村山、天童、山形、中山、山辺、南陽、米沢)

7.生活保護(平成23年11月現在 山形県)
         村山地域    最上地域    置賜地域    庄内地域    県合計
保護人員数     2593            497         1795          2340       7225
保護率(%)     0.46            0.60         0.80          0.80       0.62

cf.平成24年10月の東北各県の保護率(厚労省)
 山形0.62 青森2.22 岩手1.11 宮城1.16 秋田1.46 福島0.87 全国1.68 東北1.21

8.介護保険施設退所者調査(2006年山形県保険医協会)
・介護保険制度の改定により、2005年10月から介護保険利用者の食費・居住費が保険外負担となったため、負担増に耐えかねて「退所者や利用制限が出ている」との声をうけ、2005年10月から12月までの3ヶ月間の介護事業者に対するアンケート調査を実施。
・わずか3ヶ月で20人の退所者が確認された。
・負担が大変でサービス利用を制限した、利用料滞納、退所を検討中、入所を断念した、個室から大部屋へ移動するため空きを待っている、という回答も寄せられた。

9.山形県「県内の介護保険施設における制度改正後の状況調査」(2006年6月)
・2005年10月から2006年3月までに、経済的理由による退所者が57名(聡退所者比1.6%)いること が明らかになった。
・経済的理由による退所者の退所先は33人(57.8%)が在宅だった。

10.まとめ(求められる対策)
①男性介護(息子・夫)や地域で孤立している介護者への支援が必要である。
・民生委員や地域包括支援センターできめ細かい状況把握に努め、親身な相談や利用できるサービスを紹介していくことが必要である。
②認知症の在宅介護はいまの制度では限界的な状況である。手厚いサービスの提供など制度の大幅な改善や行政の支援が必要である。
③経済的な支援が必要である。特に50代の独身男性や年金暮らしの方が介護している場合に深刻な状況にある。息子が介護している場合は就労も困難で、要介護者の年金が主な収入になっている。低所得者 の介護保険料・利用料の減免制度の拡充で、低所得者でも施設サービスが利用できるようにする必要がある。さらに、利用しやすい生活保護制度の改善が求められる。
④安心して介護ができる介護サービス供給体制を拡充する必要がある。特に医療・在院日数のしばりなどにより、医療機関から在宅に回される事例があるが、特養・老健・療養型施設の拡充で、受け皿を増や す必要がある。
⑤この間の介護悲劇が庄内地区で50%を占めることから、庄内地区の分析・対策を強化する必要がある。孤立死・孤独死の数も鶴岡市・酒田市が突出していることから、分析・対応を進める必要がある。合併 後の地域(櫛引、温海、平田)で事例が発生していることから、行政単位の拡大による管理の困難さが影響していることも考えられ、きめ細かい対応が必要である。
⑥健康長寿政策を進めるために
 1万人以上いる寝たきり老人を減らし、健康長寿の山形県をつくるために長野県の分析を進める必要がある。その指標として次の事項があげられる。
1)保健予防活動の強化(がんや生活習慣病死亡率の低下、平均寿命の伸張、医療費の低下)
2)生活習慣・食生活の改善(野菜の摂取量増、食塩摂取量減、喫煙者・肥満率の減、運動習慣)
3)65歳以上の就業率全国一
4)高齢者の社会参加の機会
5)小さい行政単位(1万人が基本)
6)行政・病院・住民三者の連携
                                                                                          以上